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全員が最高評価を取れればみんながハッピー/日本経営のケイエイ

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート

(株)日本経営での取り組みや私が考えていることなどを発信していきます。
皆様の経営のヒントや新たなアイデアなどにつながれば幸いです。

全員が最高評価を取れればみんながハッピー

株式会社 日本経営 / 代表取締役社長 橋本竜也

6 . 7月は多くの企業で賞与の支給があったと思います。
当社も年2回の賞与となっており、7月に無事賞与を支給しました。賞与を支給できるというのは、経営陣にとって大きな喜びですね。従業員の皆さんが業績を作ってくれているからこそです。

さて、人事評価に基づいて賞与や昇給の額を決めている企業は多いと思います。当社では、人事評価は全員が最高評価になることを目指すという考え方を持っており、その考えを従業員とも共有しています。高評価が多ければ、会社の業績もよいということなので、従業員にとっても会社にとってもハッピーということになります。今年度も当社ではS評価やA評価が高い割合を占めていました。これはとても喜ばしいことです。
評価ランクの割合が決められていたり、高い評価が多いと調整をする企業も少なくありませんが、当社にはそのような考えはありません。経営者からすれば、「当社の従業員はA評価が多いんですよ!」と言えるのは誇らしいことだと思いますが、「当社の従業員の3割はCなんですよ!」とは言いたくないですよね。

高評価が多ければ業績も良いことが理想

高評価が多くてもきちんと賞与を支給できるだけの原資を生み出すためには、企業の戦略を踏まえた人事評価制度となっている必要があります。人事評価にはいろいろな設計がありますが、当社では以下の3点の評価を組み合わせています。

① 戦略実現のために各役職が果たすべき役割を果たしているのか評価する役割評価。
② 戦略遂行のために必要な行動をとっているかを評価する行動評価。
③ 求められる成果・成績を実現したのかを評価する目標達成度評価。

昇給と夏季賞与は①と②で評価し、冬季賞与は③のみとしています。

全員が高評価であれば、会社の業績も最高であるというのは理想的で、現実にはそこまで一致させることはできませんが、近づける努力は必要ですね。

当社では成長戦略に基づいて人事評価を設計しているため、みんなが高い評価になるよう上司は支援し、それが実現できたときには業績もよいという状態が作れています。皆さんの組織ではどうでしょうか。

何かをサンプルにしたり、どこかの企業のモノを拝借してきたり、何となく大事そうなことを並べた人事評価表の場合、企業業績と人事評価結果の連動性は作れません。多少不一致なところがあったとしても、戦略を踏まえた自社オリジナルの人事制度がお勧めです。

能力やスキルの評価が中心だと業績と連動しにくい

実は、かなりしっかり評価はしているが、業績との連動性は低いというケースもあります。それは、能力やスキルの精緻な評価です。

例えば、「〇〇加工機を操作できる」「〇〇商品のプレゼンができる」「顧客管理システムを駆使して必要な資料を作成できる」といったものです。こうした能力やスキルは、仕事をする上で必要不可欠ですが、企業戦略との直接的な連動性が高いとは言えません。

狙った業績を達成することができるのは、戦略を効果的に遂行するからです。そのため、戦略を効果的に遂行しているのかを中心に人事評価を行えば、業績と人事評価結果の連動性は高まります。効果的な取り組みをせず、業績が思ったように上がらなかった場合は、人事評価結果も低くなります。

ところが、能力やスキルは、業績の関与の有無に関わらず基本的に下がることはありません。業績が悪いから加工機が操作できなくなった、プレゼンができなくなった、といったことはありません。そうした能力やスキルはあるとしても、それ自体が業績を作っているわけではないのです。能力やスキルは仕事をする上で不可欠ですが、人事評価においてそのウエイトが高くなるほど、業績との連動性は低くなってしまうのです。

業績や業績を作るための戦略遂行に貢献する人事評価にするためには、役割評価、行動評価のウエイトを高めにし、結果については成績評価や目標達成度評価で報いていくことがポイントです。

みんなが高い評価になるように会社や上司はみんなを支援する、みんなが高い評価になっているときは業績もよく、従業員に報いることができる、これが目指すべき人事評価の好循環だと考えています。

従業員の貢献に関心を持ち、報いていきたい

従業員の様々な取り組みの成果の中には、人事評価の項目では把握しきれない貢献もあります。例えば、大きな成果を上げたけれども 、期首には目標に入れていなかったので、どこで評価すればいいのかというケースがあります。また、人事評価の基準では評価しきれない多大な貢献もあります。

このような貢献に対して、会社として何もしなければ、従業員に対して「会社は見てくれない」「求められた以上のことをしても損だ」という気持ちにさせてしまうかもしれません。できれば、当社は「会社はきちんと従業員の取り組みを見ている」「貢献があれば報われる会社だ」と信頼される会社でありたいと思います。

そこで、当社では特別貢献賞与という制度を設けています。この制度は、事業の広がりや認知度の向上、会社機能の向上、会社の強みの向上などに繋がった成果に報いるために実施しています。具体的には、以下の項目のいずれかに該当しているのかが基準となります。

・ビジネスモデル効果
 会社全体に影響するビジネスモデルの確立に貢献した。
・マーケティング・ブランド向上
 会社のブランド向上や競争力向上に貢献した。
・新規性
 当社に今までなかったサービスや商品、ノウハウ、分野を確立に貢献した。
・実現困難度
 社内リソースや世の中の視点から見て、実現困難な成果をあげた。
・内部貢献
 誰かが担うべきことについて、本来の担当業務の範囲を超えて全社に貢献した。
・業績インパクト
 短期的に圧倒的な業績を上げた。

上記の項目については、より詳しい基準や段階が設定されています。
また、年2回 、賞与時に実施しており、部門長から推薦を上げてもらい(役員から直接推薦があるケースもあります)、その内容を役員会で吟味し、特別貢献賞与に該当する成果なのか、該当する場合の評価の程度はどれくらいかを判定しています。
一つの貢献について複数の項目が該当することや、一つの貢献で複数のメンバーが対象となることもあります。

気になるのは支給される金額だと思います。全社に広がりのある貢献を「特別貢献」としているので、それなりの金額を支給しています。高い場合は数百万円という場合もあります。
金額は非公開ですが、対象とした貢献、その理由、対象者については、全従業員に説明しています。これは、会社は従業員の貢献に目を配っていて、その貢献に報いたいと考えているというメッセージを伝えたいからです。残念ながら目が届いていないケースもあるだろうとは自覚していますが、それでも、改善しながら、従業員の皆さんの貢献に応えていきたいと考えています。

特別貢献賞与の重要なところは、従業員が狙って取るものではないということです。お金で貢献を引き出しているのではなく、貢献が先で、それに対してきちんと報いていくことが重要です。つまりインセンティブではなく、信頼関係形成の取り組みだということです。「しっかりと見てくれている」という信頼感はエンゲージメントにおいても重要でしょう。

特別貢献賞与を始めて数年たちますが、良い方向で当社の文化として定着してきていると思います。そのため、特別貢献賞与は、どの組織にもお勧めです。皆様の組織でも取り入れてみてはいかがでしょうか。

※これまでの記事は、こちらからご確認いただけます

このレポートの執筆者

橋本竜也
株式会社 日本経営 代表取締役社長
組織人事コンサルタント

1999年入社以来、人事コンサルティング部門にて、クライアントの人事制度改革に携わるほか、不採算企業の経営再建にも従事。コンサルティング実績は上場企業から中堅・中小企業まで150社を超える。「良い経営は人を幸せにする、悪い経営は人を不幸にする」を基本スタンスに、人事コンサルティングや経営顧問を行っている。
<著書>
「チームパフォーマンスの科学」幻冬舎2021年12月
「中小企業の未来戦略を具現化する!組織マネジメント実践論」プレジデント社2022年10月

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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